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takibi BRAND HI(火) STORY

守り、引き継ぐブランド思考と、デザイン。

次は、朝日ネットのCIの話である。

asahinet_logo3.jpg朝倉「朝日ネットさんからは、今後事業の方向も変わるし、ロゴを全く変えてもよいという話でした。takibiとしての関わり方は、マクロミルのケースとちょっと変わるんですけど、私たち

が直接、鈴木さんのところをディレクションするっていうよりも、何社かを集めてコンペの場を作るっていうこと
が主眼でした。ですからtakibiから直接、鈴木さんに仕事を発注したのではなく、takibiの推薦を含めて調査し3-4社にコンペの依頼する、そういう形の仕事でした。takibiではまず「つなぐをつくる、つなぐをささえる。」というコーポレートメッセージを作りました。上質なネットやサービスのインフラを提供する事業でIPV6という新しい仕組みのインターネットインフラを、ISP各社は共同で行うところ、朝日ネットは独自に構築して、差別化を図ろうとされています。
また、これから単なるISP(インターネット・サービス・プロバイダー)としてだけではなく、企業やコンシューマーに違うレイヤーでのサービスや価値を付加していくという方針でした。なので当初はASAHIネットさんとお話し、全く違う見え方にした方がいいだろう。このタグラインにマッチする事のみを条件として、いかにそれに合った企業ロゴを創るか、ということになりました。

鈴木氏「この時、朝倉さんはクライアントの、ブランディングチームのメンバーで、クライアント側のテーブルにつく人たち、でした(笑)」

朝倉「コンペの時に各社とちょっとだけお話しさせていただいた時には、そういう経由なので、コーポレートメッセージの「つなぐをつくる、つなぐをささえる。」を活かすデザインですから、全く新しいアイデアでお願いしますって話でした。でも鈴木さんからはそれはクリアした上で、このままでも少し整えればいいんじゃない?という、+αのデザイン提案があったんです。それが刺さったんです。

鈴木氏「シンボルの三角は残し、朝日ネットのNが筆文字のような表現だったんだけど、基本レイアウトは変えずにアレンジしました。建築でいうと、躯体は残して、内装を変えるっていうか。やっぱり、あの三角マークは、社員の方の印象に強く残っていたと思うんですね。
だからその財産を、例えばいきなり丸にしちゃったら、どうなんだろうーって。もし、変えたほうが絶対いいっていう確信がそこにあれば、丸にした方がいい!と言ったと思うんですけど。
だから、いろんな案を作りました。両方見た時に、前のロゴのイメージを残した案を皆さん評価してくださって、そっちに決まりました。

朝倉「私は、選ぶ側にいましたが、やっぱり『はっ!』としました。確かに、こう手を加えると、いままでちょっとダサいとかと思ってたロゴが、とても洗練されてきた。ほんのちょっと、数ミリのことなんですけど、ほんのちょっとしたことに気付けるかどうかって、やっぱりすごく大きくて。鈴木さんに気付いていただけて、提案していただけた」

MG_9326.jpg朝日ネットで鈴木氏とtakibiが組んで行ったブランド作業にもう1つAiSTRIX(アイストリクス)という、クラウドによる監視カメラソリューションのVI作業がある。

朝倉「これはクライアントの有田部長が考えたネーミングで『STRIX(ストリクス)』っていうのが、ふくろうだったんです。それだけでは商標が難しく、AIっぽく、アイをつけた。

元々、キャラクター提案が欲しいと言われたわけでもなかったんです。クライアントさんと打ち合わせをする中で、まずは鈴木さんのところにお願いしたいって話がありました。ロゴを作りましょうってなった時、鈴木さんの方から、なんかモチーフがあった方がいいよねって提案がありました。『STRIXだから、ふくろうでしょ?ふくろうをビジュアル化したら?』って言っていただいて」

aistrix_key2.jpg鈴木氏「ロゴを作るにあたり、キーグラフィック、キービジュアルみたいなものが必要なんだろうなって思っていて。『それはなんですか?』って話になった時、ふくろうはネーミングにも入っていて、それをうまく具体化できないか?と話が詰まっていきました。
それと、この事業がとても先進的な技術っていうことがあります。ただ、やっぱり最終的に人間が生活するにあたって一番快適なようにするのがテクノロジーだと思いました。
そういう意味でやっぱり、デジタルとアナログっていう、どっちもあるべきだろうなという風に考えが進んで。どっちか100%でなく、両者があって初めて成立するのだろうから、それをビジュアルで再現できないかって。で、こういうことになったんです。まあ今、口で言うと確かにそうなるけど。その時はそんなことは考えてなかったかもしれないですけど(w)」

朝倉「最近、鈴木さんのCIのお考えについてなんですけど。
ぼくはその時にふーんって思ったんですけど。CIって普通、マークとタイポグラフィーがくっついていて規定が決まってるんですけど、鈴木さんそこはフリーでいいんじゃないかって思ってますよね? 例えば、このアイストリクスのマーク、涙みたいなっていうか、目みたいな。それとタイポグラフィー。この2つの関係もばちっと決めないで、自由でいいじゃないかと?」


aistrix_logo.jpg鈴木氏「細かく決まり事を作るのが本当にいいのか?って最近は思ってます。ロゴマークって、シンボルとタイポグラフィーのセットですよっていうのが一般的な考え方。でも、どんどん変わっていくと思うんですよ、そういうの。規則はあっても柔軟に考えて、全体のブランド管理ができるんじゃないかなと思っています。

アナログな印刷物だけなら変化しないけど、今のデジタルメディアはサイズも変わるし、もう動くわけですよ。例えば、スマホで見たらとか・・・。そうなった時、固定された組み合わせが絶対ルールなのか?技術が変わると表現も変わらざるを得ないのではないか。

ネット広告のバナーもアプリも、レイアウト的に一番目立つものが最優先されるわけで。そういう技術とともに、表現の考え方も見せ方も変わってきて、それはみんな、そう思ってるんだろうなと思うんですけど。

毎日Google開くと、いろんなGoogleの絵文字みたいなのが現れるわけじゃないですか?あれは一つのブランディングの方法だろうし、もちろん、CIのレギュレーションみたいな観点で見れば、やっぱり、Googleのロゴは1個ですって話にはなるんです。その垣根っていうか境目が、見る人が多様化すればするほど、その時によって変化する。5年10年でどんどん変わってくるんじゃないかと思います。

朝倉「鈴木さんの今言っていることを他のデザイナーに言うと『そうだね!』って多分言うと思うんですけど、でも他の人はあんまりそれをやらないんですよ。でも、鈴木さんはやっちゃう。「いいんじゃない、これで」みたいに。そこに踏み込める、最後の現実に、エクゼキューション=実行まで、行くか行かないかで言うと、鈴木さんはフットワークが軽いんです。ぴょーんと飛んでいただいけるので、こっちがはっとする。」

鈴木氏「ある企業にCIの提案した時、ロゴを作るアプリを作って、社員が好きなロゴ作って名刺に入れられるのがいいんじゃないって考えました。そのアプリでロゴをつくるという行為が、その会社のブランディングなんだっていうことを表現したらどうですか?って提案して、アプリまで作ろうとしたんだけど、最終的には実現しませんでした」

朝倉「Googleとかを見るとその手のはしりって、MTVなのかなと思ったんです。MTVって、ある時はロゴが手書きだったり、メタリックだったり。でも、あのフォルムは守って、その大きな約束の中で、色々楽しい感じてくれることをみんなが体験した。最後に鈴木さんに聞きたいんですけど、『鈴木直之』というブランドは、この先、どういう役割を担うんでしょう?」

鈴木氏「肩書はアートディレクター・グラフィックデザイナーなので、そこは変わらないと思います。」

朝倉「コミュニケーションデザイナーとか、もし言おうと思えば言えるじゃないですか」

鈴木氏「うん。でも自分が得意で、人よりは多少何かができる分野が、いわゆるアートディレクションと、グラフィックデザインだと思っています。それは日本では、亀倉雄策先生をはじめとする多くのデザイナーが、ゼロから創ってきたこの肩書きを使って、ぼくらはその上に乗っかっている。
先人が切り開いてきた道を消すわけにはいかないんです。だから、レールはきちんと残していかないといけないんじゃないかな。それがどこまでできるか分からないですけど。とにかく作ってもらったものを、なくすわけにはいかない。だから肩書って意味では、アートディレクターとグラフィックデザイナーってことだと思います。
ただ20世紀と21世紀では、やっぱり経済の仕組みや技術、メディアが変わってきていて、当然求められることも違ってくる。そういう意味では急速に新しい職能や新しいスキルが必要になってくるのかな、と思います。ただこの仕事は結局、ある意図やアイデアをどれだけ形にできるかという仕事なので、
デザイナーと言われるなら造形力が絶対に必要です。

MG_9288.jpgデザイナーとして、そこは揺るがない、変わらないと思います。表現として伝える方法論が時代とともに変わるだけ。

近年では、建築物のサインデザインの仕事も多く行っています。グラフィックデザインを空間や立体物にもいかしていきたいと。専門的な図面はかけませんが、ある程度はイメージできるし、素材などの色々なアイデアも出しています。ただ実現させるのに、安全面とか取り付け、電気など専門知識が必要なので、そこはチームとして専門家に助けてもらいながら進めています。ランドスケープの1kmとか2kmの単位で考える人と、数ミリ単位でレイアウトを決めるグラフィックデザイナーでは物の見方や考え方は大きく変わってくる。グラフィックデザイナーと視点は違うけど、人間にはそもそも2つのスケール感覚が備わっていることを考えると、目指すべきゴールは一緒で、その両者の視線がうまく噛み合えば、人が使う時に、非常に気持ちのいい空間になるんじゃないかなって、そういう意識でやっています。
グラフィックデザイナーの役割を限定せず、拡張して、その経験を次につなげていく意識は常にありますよ。
デザイナーを始めた頃、写植屋さんという職業が必要でしたが、今はなくなってしまいました。これから、AI化が進んで、AIが人に変わってデザインをするかもしれない。その時に、人にしかできない発想とか経験を活かし、能力を発揮していけば、この仕事は面白そうって思ってもらえて、また次の世代の人たちが、デザイナーの道を進んでくれるとようになるといいなって思います」

朝倉「あと最後に、鈴木さんから見て、takibiってどう思っていますか?あまり聞いたことなかったんですけど。(笑)」

鈴木さん「やっぱり自分が好きだろうと思っていることに、没頭している人っていうのは見ていて、こっちも楽しくなるし元気になる。20年ぶりぐらいに朝倉さんに声掛けてもらった時に、なんで自分だったのかなって思ったりもしたんですけど。どこかに自分とやったことの記憶が残っていて、思い出してもらえたんだろうなと。久しぶりに会って話しした時に、直観的にはぼくたちは作るってことに対して向いている方向性が似ているなと、すごく思いました。20年ぶりですけど、またここから色んな物を一緒に作っていけるんじゃないか、そういう予感はなんとなくあります。そういうつながり感っていうか。その仕事の仕方なり、できあがってくるものなり。あとクライアントとの接し方みたいなことは、非常に丁寧だと思います。ちょっと誤解を受けるかもしれないですけど、仕事で起きるいいことも、辛いこともポジティブに受け止めて、自分でそういうことをとても楽しんでる感じは、ありますよね。

朝倉昇誠の話は擬音語が多い。最後に、朝倉節を楽しんでいただくために、ここは校正をしないで、書いてみよう。

朝倉「楽しんでます。丁寧すぎてね、逆にそんな丁寧にしない方が、ぽぽぽーんっていって、もっといいものできたのになって思う時は多々ありますね。ちょっと知らないでおいた方がいい時ってあるじゃないですか。ズバっといけるから。あれが、やっぱできないなーって思う自分がたまにいたりして。なんか、拾ってあげたくなっちゃうんですよね。ピュピュって。そういうのあるんですけど、でも楽しくやってると。」

MG_9318.jpg拾うのになんでピュピュなのか?

次はマクロミルの制作物を手にしてのトークである。

「これも、すいません。色々何度も提案して、何度も何度も何度もね。次回は散々言って、3月から夏に向けて始動します。はい。もう、無理だって言って。生産期間も取ってくれないと、ツールの。やっぱ、物が同じになっちゃうんですよ。もう、こーんだけ10年もやってると」

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