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takibi BRAND HI(火) STORY

ブランドコンセプトを生む、源流

今回の"takibi BRAND HI STORY"は、株式会社ダイアグラムの代表であり、アートディレクター/グラフィックデザイナーの鈴木直之さんである。

J4A0974.jpgまずダイアグラムは、とても素敵な英単語である。ダイアグラム=「変数の相互作用や、何かがどのように構成されているのかを示す計画図・図面」。鈴木さんのデザインは、まさにダイアグラムの概念に基づいている。takibiは、とても良いいくつかの仕事を鈴木さんと一緒にさせていただいてきた。
takibiはブランド構築、広告販促計画を作り、それらを実行する会社である。そのためにクライアント社内のコンセンサス作りを行い、コンセプトを作り、或は選び、調査を実施する。さらにいろいろな制作物(グラフィック広告や映像、WEBサイト、POP(店頭陳列物)、ノベルティの制作と進行管理を行う。忙しい宣伝部やマーケティング部の作業を戦略や計画づくりからまるごと引き受ける会社である。従って社員は全員、ある程度器用にラフを作る能力を求められる。しかし、最終的な精密なデザインは、その仕事になるべくぴったりとテイストが合う、さらに「驚きのある正解」を一緒にじっくりと考えてくれる、プロとの共同作業になる。

デザインはブランドを作る上で、一番大事な要素だ。それは多分デザインが、ものごとを本質的に整理する仕事だからではないか。コピーとか映像は、多分その本質に何か余分なもの・・・、例えば時代のフレーバーとか、人目を引くアイデアとか、競争に勝つすこし余分な要素を付け足して成立している。しかしデザインはその商品やサービスの本質、余分な要素をなるべく排し、また重要度の順位を付けて整理する仕事だ。そうしないと良いデザインはできない。
それは戦略と直結するし、また戦略の良し悪しを表す最高の指標になる。もちろん戦略の本質を理解するデザイナーと組めば、という話ではあるが。

ということで鈴木直之さんにブランド作りをするためのデザインについて、インタビューをお願いした。お伺いした事務所はデザイナーの聖地、神宮前である。鈴木さんの事務所は、日本で先駆けとなったデザイナーズマンションにあった。事務所には夾雑な資料は何ひとつなく、全てが整理されている。窓が大きな眺めのよい会議室に、端正な容貌の鈴木さんが紺のジャケット姿でいた。

jamaru.jpg今、takibi代表の朝倉昇誠が、当時"グラフィックデザイナー"の鈴木さんに出会ったのは、約20年前。

朝倉「ぼくは当時リクルートにいました。個人情報誌の『じゃマ〜ル』っていう雑誌のスピンアウト企画みたいな感じで「テレビじゃマール」っていうCS放送の放送局をはじめたんですけども、そのステーションロゴをつくるにあたって本体のじゃマ〜ルと、ちょっと親和性があった方がいいとなって。
で、そのじゃマ〜ルを作った事業責任者の人に、誰かいい人いませんかって紹介をしてもらおうと思ったんです」


tvjyamaru.jpgこのじゃマールというのは、1995年11月から2000年6月までリクルート社から発行されていた個人情報誌である。内容としては、個人間売買を扱う情報と人との出会い(友達、サークル仲間、交際相手など)を扱う部分で構成されていた。雑誌の発想は素晴らしかったが、この機能のほとんどはインターネットメディアでオークションへと移行することとなる。そしたら、「じゃマールのロゴ作ったいい人がいるから、彼に頼んだら?」という話になって。で、鈴木さんに来ていただいきました」

鈴木氏「20年前だから、当時30前半ぐらいですかね」

朝倉「鈴木さんはその時まだ、タイクーングラフィックスというデザイン事務所をやっていて・・・サングラスして『どうもー』って来て。うわっ、サングラスしてきた!」と思って。

その縁を思い出して、朝倉はいきなり20年ぶりに鈴木さんに電話をかけた。

MG_9313.jpg朝倉「マクロミルはこの15年ぐらい、takibiで仕事をさせてもらってきました。最初はちょっと、かわいいキャラクターみたいな感じのロゴでやっていたんです。リサーチ会社って堅く難しく見えるから、初めて新規参入で事業をするのでカジュアルというか、かわいらしい感じを演出した方が人気出るだろうと・・・みんながクソ真面目なイメージで調査会社をやっているとき、カジュアルな、ちょっと愛くるしいイメージで、違和感を出してやっていく作戦だった。そして、それは十分に機能した時代がありました。
最初はぼくらが仕事を始めた時は、まだ30人もいない会社だったんですけど、ついには1000人超えるような会社になり、グローバル化して上海とか韓国にも会社や支店ができるようになった。

macromill_logo.jpgすると、あのゆるキャラみたいなロゴはまずいだろうと。虫みたいで気持ちが悪いとかアジアの人に言われたり・・ですね(笑)。ということでロゴを変えてCIをしたい、という話になりました。
その提案はコンペでした。『もともとのデザインをしたお前も、変えるのはちょっと面白くないかもしれないけど、提案してくれ』って話があって、その時、誰でやった方がいいかなって考えた時に、今度は"洗練"だろうと。かわいいから次は逆に洗練の方に振るんだろうなと思った時、洗練と言えば鈴木さんだと」

MG_9275.jpg彼は、自分のセンスでは洗練系はちょっと苦手なのである。

鈴木氏「よく思い出してもらえましたね、20年後にね。」

朝倉「ホームページ調べていて、ホームページがあった!って。で、その時、ホームページから、覚えてらっしゃいますかって言って、連絡しました。」

朝倉昇誠は常に、プロデューサーの鑑なのである。

朝倉「そしたら、覚えていただいていて。実はこういう話があるんですっていう話をしたら、やりましょうってことで、やっていただきました。ただ、全く新しい物過ぎるとどうなのか。今までに、そうはいっても10年ぐらい色々とプロモーションで蓄積して、みんなが覚えているイメージがあるので、そこはなんとなく守っていただいた方がいいと思っていたので、そこはお話しました。
CIのコンペを、受けた時の直観で、Mという文字は、やっぱり基本にあるべきだっていう話と、「矢印」をなんとなくモチーフにしたいっていう話だけ、僕の方からさせてもらったんです。」

彼はクリエイティブディレクターの鑑なのである。

鈴木氏「ロゴデザインのリニューアル依頼としては、既存ロゴから大きな変化を求められる場合が多いのですが、全く新しいイメージに変えることが、本当にベストなのかよく考える必要があると思います。朝倉さんもさっき言ったように、変える前のロゴって社員の記憶にも残ってるし、気に入ってる人だってたくさんいるはずなんです。建築物のようにいきなりスクラップアンドビルドして、全部壊して新しく建て替えるのが果たしていいことなのか。良い部分を残して進化させるということも大事なんじゃないかと。

MG_9292.jpg多くのCIやロゴを手がける仕事をしている間に、そう考えるようになりました。朝倉さんから、『こういう目玉の虫みたいなロゴはやめたいんだけど』って話しがあった時に「ここにあるDNAはなんか引き継ぐっていうは多分大事なんじゃないか」って話もいただきました。
「矢印」と「M」っていうヒントを、朝倉さんの方からもらって、それは非常にいいアイデアだなと。それを形にするなら、どんな感じがいいのか、いくつかの案を考えて提案しました」


面白いのは、矢印というディレクションである。この時にぼくもアイデア会議に出ていた。(マクロ)ミルが風車を意味するので「車」とか「風」、「動力」といったイメージを考えてみたりしたのだが・・・朝倉は矢印を選んだ。

朝倉「矢印のアイデアは、当時マクロミルの代表だった杉本さん(*takibi BRAND HI STORY / 第一回 マクロミルとantenna*に詳しく書いてあります)との会話の直観から。杉本さんとは付き合いが長いので。今までは、『調査を早く、安く、おいしくやる』と。それこそ、リサーチャー吉野家版みたいに言われてきました。そこから事業とブランド作りを始めたんです、マクロミルのネットリサーチって。要するに安い感じっていうのが大事だったんですよ。格がありすぎると、なんかお高いんでしょう?って、クライアントから思われちゃいますから。無言で。そういうことがあって前は、かわいい、好かれる感じできました。
でも成熟して大人になってきた時に、「もう安いだけじゃないです、私たち」って話なんですよ。だから知性みたいなものもアピールしていいし、クオリティも確かだっていうブランドが必要になってきました」

しかも、マクロミルはその時、海外の調査会社を買収して、グローバルになろうとしていた。もう1つ企業のステージを上げることを「CIデザイン」でやらなければいけなくなっていたのである。

朝倉「ネットリサーチというのはそもそも、""早い、安い、うまい"だけで十分、市場が成長出できていた産業でした。でも総合リサーチ会社になろう!と思った時、『そもそも調査って、何のためにあるの』ってベースをもう一度考えなきゃいけないかなと。
すると、そう。迷ってるから、調査をやるんです。迷ってなければ、やんなくてもよくて。このままやろうって決められなくて、迷ってるからやる。
その迷ってるっていうのは、なんなのかって考えた時に、方向。ディレクションかな?と。決める、一歩手前なんだなと。だから、決めるためにやってるってことを、どこかで、やっぱり表現すべきと思って、矢印というディレクションになったんです」

鈴木さんに、そういうディレクションは自分で全部考えたいものなのか、スタッフに出してもらった方が良いものなのかお聞きしてみた。

J4A0953.jpg鈴木氏「ぼくはデザインというのは、基本的に共同作業だと思っています。自分の中からひねり出てくるっていう感覚はあんまりないんです。何かを依頼されるわけじゃないですか。それに対して色々なことを聞いたり、自分で知らなかったことを調べたり・・・そこにどんどん近づいていくために情報をたくさん自分にインプットしていかないと『これがいいんじゃないか?』と判断できるようにはなりません。

そういう意味でいろんな可能性を検討する、常にたくさんの可能性を頭に置きながら、より良いものを考えていくプロセスです。そうすると、たまたま、アイデアの一つが何かにつながって、この色とこの組み合わせって結構いいかも、とか・・・。つながって発展する瞬間があるんです。
そういうことって、みんなで考えてアイデアを出しあわないとつながらないし、ある程度いろいろな可能性を含めて、情報をこっちでも自分の中に持っていないと、つながってかないと思います。
そういう意味では、「自由に考えてやってください」って言われることの方が、むしろ、すごく難しいですね。

朝倉「仕事のスタイルは体制というか、チームをつくる場合が多いですか?」

鈴木氏「基本的には必ずチームです。一緒にコンセプトを考えてくれる人とか。クライアントから直に仕事が来たとしても、自分は、言葉のことはやっぱりあまり考えられないわけです。だから朝倉さんのようなディレクター・コピーライターな人にチームに入ってもらうとか。
ぼくはアートディレクターとして、ブランドの意匠の監督はできるんですけど、その会社や事業がどこに向かうのかという方向性はデザインとまた別のベクトルで、企業戦略とかマーケティングの話だと思います。ただ経営戦略自体においても、今後、デザインという考え方は大切だと思っています。
仮に、チームにそういう人がいないんだとしたら、クラインアントの社内に、そういうことをきちんと整理する人間が必要で、その場で話しあったアイデアを形にするというやり方になるのでしょうね。
アイデア出しやコンセプト作りは、社内、社外に限らずチームとして行うことが多いですね。」

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